東日本大震災から10年...記憶を風化させないように！と震災時の映像が流れ始めた２月13日夜、再び福島を地震が襲った。10年前はクリニックに居て、カルテや薬が棚から崩落するのを見たが、今回は自宅にいて神棚ばかりか、テレビやレンジが落ち、冷蔵庫の中身が飛び出し警報音鳴り止まず、人形ケースは砕け散り本は散乱。自宅においては、今回の被害の方が大きかった感がある。しかし、10年前とは決定的に異なった事がある。それはインフラである。前回は電話も繋がらず、停電となり、ガスも水道も止まって、即、生活に困難を極めたが、今回止まったのは東北新幹線くらいではなかったか？格段の進歩を認めざるを得ない。

　私は、今年70才になる。開業した時にはまさかこの年まで、この古い建物で続けているとは予想もしなかった。初代は死亡閉院、二番目は１年で病気閉院した因縁の物件である。しかしなんとか『低迷クリニック』と揶揄されながらも生き長らえて来た。私の頭の中で「閉院」の文字が大きくなったのは、昨年のコロナ禍で患者さんが激減し、待機時間が増えたことにも起因する。東京で歯科医院を開いている従兄弟は、一足先に70才を迎えた。以前から70になったら引退する！と公言していたが、コロナ禍で、「こんな貧相な状態で売却して送別会もなく辞めるのはミジメでイヤ」と、仕方なく続けている。

　高齢化社会を反映して、世の中には『断捨離』とか『終活』の文字が溢れている。いや、自分が意識するから目につくのか。コロナの流行で新しい形の診療も求められる今後。進歩のない老害の我が身の処し方を考えよう。幸いたっぷり、暇な診療時間があるのだから...。

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佐藤　睦子／清明クリニック（福島市）