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子どもたちの真実

2020-03-25

[コラム]

子どもたちの真実

 2020年2月県民健康調査(甲状腺問題)に関する国際会議(福島市)を聴講しました。甲状腺がん過剰診断、過剰治療につながる甲状腺エコー検査の扱いが、最大の関心事でしたが深い失望を禁じ得ませんでした。この問題の大局は子供たちの不安を除き、且つ子供たちの尊厳を守ることですが、報告は表層を走ったのでした。

 報告は現時点の甲状腺がんの放射性ヨウ素起因を否認しつつも、放射線の影響の可能性を否定できないとして、検査を続けるとしたのでした。しかしこれまでの福島の知見を、被爆者、チェルノブイリ、医療被ばくの知見との統合的理解の中でつかみとれば、少なくとも臨床レベルで放射線誘発甲状腺がんの増加が起きないことは明らかです。原発事故被災のなかで、そして親と子どもの葛藤のなかで得られた重い真実です。

 報告はがんの診断や手術をうけた方には長期にわたり心理的・社会的不利益の可能性があることに触れるものの、報告はその心理的・社会的不利益を人生早期の「担がん」という事態に求めていることです。それを是としつつも、しかしそれ以上にその不利益の本質は、(検査継続の理由でもある)「放射線の影響」という国民からの視線なのです。早期手術のメリット論(合併症・再発率の低減)を対置しても、その視線を相殺させるものではありません。

 子どもたちに「放射線の影響は否定できない」と述べることは、検査のゴール(終了)はない、という意味でしょうか。

 科学の名で子どもたちに新たな呪縛(スティグマ)を仕掛けてはいけない。

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(齋藤 紀(医療生協わたり病院)/福島市)